私には推しがいる。推しと言っても、今流行りのアイドルやボーイズグループではない。若手チェリストの広田勇樹さんだ。東京藝大を卒業後パリに留学、オーケストラ等に参加された後、今は主に国内で室内楽奏者として活動されている。演奏会は全国各地で開催されており、熊本は言わずもがな、福岡まで大喜びで聴きに行く。
彼の魅力は、奏でるチェロの音だけではない。醸し出す雰囲気や佇まいがたまらない。端的に言うと、とてもかっこいいのである。耳だけでなく目でも十分に楽しめる。
先日、デュオのリハーサルの様子をSNSにあげておられたので食い入るように視聴したところ、演奏というものがかなり緻密な作業だということがよくわかった。ピアノとチェロの協奏曲を演奏されたのだが、2人の音を絶妙に混ぜつつ、お互いを引き立てなければならないという。また、楽譜のとおりに演奏すればいいというものでもないそうで、テンポの揺らぎや音に力を込めるタイミングなどは音楽家の個性が出る場面であり、デュオやトリオではやはり相性もあるということだ。
彼の演奏を聴いていつも思うことがある。私は、彼の何に惹かれているのか。思うに、素晴らしい演奏の陰には長年積み重ねてきた努力があるはずで、その過程に思いを馳せ、心が揺さぶられているのだろう。プロとして活動する今でもなお、真摯に、かつ謙虚に音楽と向き合う姿勢に惹かれているのだ。
自分の毎日の生活と重ねてみて、反省しかない。日々を漫然と生きていないか。真摯に自分の仕事に向き合っているか。基本的なことがおろそかになってはいないか。推しは、私に多くのことを気付かせてくれる存在でもある。(竹下)

