相続税は「かからない」

 相続が起きると、必ず「相続税」がかかると思っている人が多い。熊本国税局の発表によると、熊本県の令和6年分の相続税の申告実績では、亡くなった人2万4660人に対し、相続税を申告した人は1,370人、課税割合は5.6%だった。つまり、94.4%の人は、相続税はかからない、ということになる。

 ここで、改めて相続税の仕組みを整理すると、まず、亡くなった人が、遺産(亡くなった時点で持っている財産のすべて)をどれくらい持っているのかを知る必要がある(①)。その上で、その遺産の総額が、ある一定金額を超える場合は、相続税が「かかる」。一定金額を下回れば、「かからない」という仕組みだ。

 では、その「一定金額」とは、どうやって計算するのか。それは、まず「相続人の人数」を数え、その人数に「600万円」を掛け算する。たとえば、相続人が3人なら、3人×600万円で、1,800万円、4人なら、同様に2,400万円という感じ。その金額に、さらに「3,000万円」を足し算する。すると、相続人が3人の場合は、1,800万円+3,000万円=4,800万円、4人の場合は、2,400万円+3,000万円=5,400万円となり、これが前に述べた「一定金額」(②)となる。

 亡くなった人が残した遺産の総額(①)が、この一定金額(②)を超えれば、相続税がかかる。超えなければ、かからない。この時点で、9割以上の方が、相続税とは関係ない、という話なのだ。熊本では、東京や大阪などの都市圏と比べ、地価が安いので、よくある資産構成「預貯金+不動産(自宅の土地・建物)」では、相続税の対象にならないことが多い。一方、相続税がかかるケースは、亡くなってから10カ月以内に税務署に納税しないといけないので、遅れないように手続きを進める必要がある。

 よくある質問で、亡くなって数年が経過した後で、実家の名義変更(土地・建物)を行うケースがある。その時に「名義変更して、所有者が変わると、新たに所有者になる人に『相続税』がかかるんでしょ?」と聞かれることがある。今まで説明してきたように、相続税は、財産を「引き継ぐとき」にかかるのではない。そもそも亡くなった人が財産を全部でどれだけ持っていたか、預貯金から不動産から全部足し合わせて、その総額によって決まる。

 まだ亡くなる前の段階で、相続税がかかるかどうか心配な場合は、まず上記の計算をしてみること。その際、不動産の「価格」は、固定資産税の「評価額」で概ね知ることができる。5月ごろ自治体から届く納税通知書を確認してほしい。ただ、これも「あるある」なのだが、その評価額を見て、その低さに驚かないでほしい。そこに記載されているのは、「評価額」であり、「時価」ではない。くれぐれも、役所に文句を言いに行かないように。(山下)