自分に信託?

 自分の財産を、自分に信託する(預ける)ことができる。「自己信託」という。

 信託の仕組みは、財産の持ち主(委託者)が、財産を管理する人(受託者)に、財産を預ける。何のため? 今のところ、財産の持ち主(委託者)の認知症対策に活用されることが多い。財産を信託しておくと、委託者が、認知症になっても、受託者の権限で、「委託者のために」預かっている不動産を売却したり、金銭を使ったりすることができる。逆に、この対策をしておかないと、本人の財産が「凍結」して使えなくなる危険性がある。

 信託において、受託者(財産を預かる人)の役割はとても重要。委託者の財産管理を受託者が行うわけで、信頼できない人には任せられない。だが、信託の仕組みを利用しようとしても、この「受託者の役割を担える人が見当たらない」というケースが結構ある。子どもがいないとか、きょうだいがいるけど、頼りたくない、とか。

 自己信託は、自分の財産を、自分に預ける(信託する)。この場合は、前述のような認知症対策には役に立たなさそうだ。預かった自分が認知症になってしまっては、管理できるはずもない。では、何のため? 例えば、「おひとりさま」が、自分の財産を自分に預けた(自己信託した)上で、自分が元気な間は財産を自由に使い、自分の死後、財産を「どこかの公益団体に寄付したい」といったようなケースに使える。

 また、遺産分割の場面で、亡くなった親の家(土地・建物)を、子ども3人で分けなければいけないときに、名義を3等分するのではなく、子どものうちの一人が家を引き継ぐ代わりに、受益権(家賃や売却金を受け取る権利)を3人で分け合うような仕組みを、「自己信託」の形で作ることができる。

 ちょっと難しい話になってしまったが、相続や生前贈与など民法の仕組みでは対応が及ばないところに、信託法という別の法律を駆使して、問題解決を図ることができる場合がある。信託はまだまだ使い道が広がっていきそうだ。(山下)