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  • 相続放棄の注意点②

    相続放棄の注意点②

     相続放棄を行うときの注意点の二つ目。それは、「空き家」の取り扱い。故人の遺産のうち、引き継ぎたくない「マイナス」の財産には、「借金」もあれば、もう一つ、「土地・建物」がある。この「土地・建物」、売ったらそれなりの価格がつくのであれば、普通に相続して売ればいい。ここで注目するのは、買い手がつかなさそうな田舎の土地(田畑・山林など)や、解体するにもお金がかかるような老朽化した建物。遺産の中にこうした「負の不動産」がある場合も、「相続放棄」が選択肢に入ってくる。

     前回も書いたように、「相続放棄」の手続きを行うことによって、始めから故人の相続人ではなかった取り扱いになる。その結果、プラスの財産も、マイナスの財産も、引き継ぐことはできないし、そもそも、故人の相続とは一切関わりが絶たれることになる。しかし、遺産の中に、特に「空き家」が残っている場合は、相続放棄して関わりを絶った後も、その空き家の「管理義務」を負わなければならないケースがある。

     空き家の管理義務について、2023年4月の民法改正により、相続放棄をした人の管理義務は「相続財産を現に占有している場合」に限定され、以前より負担が軽減された。とはいえ、「現に占有(管理)している場合」には、相続放棄をしても、引き続き管理義務を負うことになる。つまり、老朽化した空き家が、隣近所に迷惑をかけないように、最低限の維持管理をしなくてはいけないのだ。

     では、「現に占有」とはどんな状況なのか。これはケースバイケースなのだが、例えば、相続放棄をした人が故人とずっと同居していたり、また、故人の代わりに空き家の清掃や郵便物の対応を行ったり、していた場合が該当するようだ。逆に、その家に、そもそも出入りしたことがないような場合は、管理義務は負わない、ということらしい。

     相続放棄をしたからといって、一切合切、遺産と縁が切れるとは限らない、ということは理解しておくべきだろう。そして、親族関係者全員が相続放棄を行い、管理義務を負わずに済んだ空き家は、放置され、その後どうなってしまうのか。気になるところだが、それはまたいつか書きたいと思う。(山下)

     

  • 3つの期限

    3つの期限

     相続の手続きで、期限が設けられているものが、主に「3つ」ある。「3つしかない」とも言える。家族が亡くなられて「相続の手続きを急いでしないといけないんでしょ?」と、葬儀後まもなく、相談にくる人もいるが、とりあえずこの3つだけ押さえてほしい。

     ◎期限その①「3カ月」‥相続放棄
     亡くなった方に借金があるような場合、相続人がその借金を相続しなくて済むように、「相続放棄」の手続きを取ることがある。相続放棄の期限は、民法915条で「自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」とある。3カ月は相当短い。借金などマイナスの財産が、預貯金などプラスの財産を上回るかどうか、故人の預金通帳の返済履歴や消費者金融からの郵便物等で、早めに判断する必要がある。また、故人の配偶者や子が相続放棄した場合、次の相続順位である、親や兄弟姉妹に、相続権が移ることにも注意が必要。その人たちも順次相続放棄の手続きをしなければならない。

     ◎期限その②「10カ月」‥相続税申告
     亡くなった方がそれなりの資産を持っていると相続税を納めなければならない。相続税は、故人の遺産が、基礎控除(3000万円+相続人数×600万円)を超える場合にかかる。その場合は、相続税法27条で「相続の開始があつたことを知つた日の翌日から10カ月以内」に相続税を申告をする必要がある。この10カ月も意外と短い。結構な量の資料を作成しないといけないので、申告は税理士に頼み、しかも、なるべく早めに相談に行くのが無難。また、税務署から請求書が来るわけではなく、自ら申告すべきことも要注意。

     ◎期限その③「3年」‥相続登記
     亡くなった方が不動産を所有している場合、その名義変更をしなければならない。不動産登記法76条の2によると、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」に相続登記(名義変更)するよう規定されている。令和6年に始まった「相続登記義務化」。これに違反すると、10万円以下の過料が来ることも知っておく必要がある。

     家族が亡くなった後、葬儀や法要、役所の手続き等で慌ただしく時が過ぎ、故人を悼む余裕がないとよく聞く。上記①はあまりゆっくりはしていられないが、3カ月以内に相続放棄をするかどうかの判断ができさえすれば、あと、財産的な手続き(銀行の預金を引き出すなど)は、仏式では四十九日を過ぎてから行うのが一般的。こうしたことを知っておいた上で、故人とのお別れや心の整理に時間を使ってほしい。(山下)

  • 死後に離婚?

    死後に離婚?

     今日はちょっとマニアックな「姻族関係終了」について。「いんぞくかんけいしゅうりょう」と読む。簡単にいうと、夫婦の「義理」の関係を終わらせること。例えば、夫婦のうち、夫が先に亡くなったときに、妻が、夫側の親族との縁を切ることができる。

     何のためにこんなことをするのか? 夫が存命の間、妻が、夫の両親と長年同居してきたような家を想像していただければいい。夫にとっては、実の親。でも、妻からしてみたら、義理の親。嫁姑(しゅうとめ)の関係は、必ずしも良好とばかりいえない。むしろ、姑からのいじめ、嫌がらせなんて話は、ドラマでもよく登場する筋書きだ。

     その状況で、夫が早世した。この後、妻はそのまま義父母との同居を続けるのか。義父母との関係が良くない場合は、その点思い悩むだろう。民法730条には「同居の親族は、互いに扶(たす)け合わなければならない」とあり、同居する以上は、扶養する義務を定めている。

     こういった状況で、妻が、義父母や義理の兄弟姉妹との縁を切るための制度が、「姻族関係終了」である。役所で「姻族関係終了」の届出用紙を取得し、提出するだけ。だれの承諾もいらない。夫側の家族と縁を切ることから、「死後離婚」と呼ばれたりする。

     先日のセミナーで、「姻族関係が終了しても、相続権はあるのか」と質問があった。質問者以外、参加者一同、「何それ?」とキョトンとしている。私は「姻族関係終了とか、よく知ってますね」と切り返し、会場の皆さんに、まず内容を説明。その上で、「相続権はあります」と回答した。夫の相続人としても関わりたくない場合は、家庭裁判所で「相続放棄」の手続きも別途必要となる。

     以前も、この話を講座・セミナーでしたことがあるのだが、参加者の女性陣の姿勢が一気に前のめりになったと感じたのは、私の思い過ごしだろうか。(山下)