タグ: 相続登記義務化

  • 帰省の楽しみ

    帰省の楽しみ

     大分に住む一人暮らしの母の様子を伺いに、月に1回程度帰省している。片道3時間、日帰りの強行日程は、決して楽ではない。しかし、その大変さを補って余りある、ひそかな楽しみがある。それは、実家で食べる「刺身と寿司」である。

     帰省のスケジュールはたいてい、朝6時ごろ我が家を出て、9時ごろ実家に到着する。母と最近の出来事などを情報交換した後、「墓掃除したい」「病院に連れて行って」「買い物がある」など母の用事を午前中に終わらせる。そして、用事の締めに、近所のスーパーで、お待ちかね「刺身と寿司」を買い漁る。

     母が大好きなアジに始まり、ブリ、カンパチ、タイ、イカなど。大分県産の新鮮なネタを次々購入。どれも切り身が分厚く、食べると歯応えプリップリ。かつ、安い。こんなに新鮮で美味しい「刺身と寿司」が、近所のスーパーで安く買えるのだから、大分恐るべし。母の方も、いつも宅配の弁当なので、私と寿司を食べるのを楽しみにしている。毎回「生きててよかった」とご満悦だ。

     今回も海の幸にしっかり舌鼓を打った後、母から「家の名義を変えんといけんのやろ? 固定資産税の封筒に通知が入っちょった」と質問があった。父亡き後、実家の名義変更がまだ終わっていなかった。私は内心「お、郵送された書類の意味がきちんと分かっているじゃん。デイサービスにも週1回ちゃんと通っているし、認知症はまだまだ心配ないな」と、母の対応に胸をなで下ろした。そして、私からも相続登記義務化の説明をした。

     すると、「なら、(名義変更を)だれかに頼まんといけんなあ」と母。おっと、母よ。あなたの息子はそういう仕事をしているのだよ。そろそろ覚えてくれんかなあ(笑)。(山下)

  • 3つの期限

    3つの期限

     相続の手続きで、期限が設けられているものが、主に「3つ」ある。「3つしかない」とも言える。家族が亡くなられて「相続の手続きを急いでしないといけないんでしょ?」と、葬儀後まもなく、相談にくる人もいるが、とりあえずこの3つだけ押さえてほしい。

     ◎期限その①「3カ月」‥相続放棄
     亡くなった方に借金があるような場合、相続人がその借金を相続しなくて済むように、「相続放棄」の手続きを取ることがある。相続放棄の期限は、民法915条で「自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」とある。3カ月は相当短い。借金などマイナスの財産が、預貯金などプラスの財産を上回るかどうか、故人の預金通帳の返済履歴や消費者金融からの郵便物等で、早めに判断する必要がある。また、故人の配偶者や子が相続放棄した場合、次の相続順位である、親や兄弟姉妹に、相続権が移ることにも注意が必要。その人たちも順次相続放棄の手続きをしなければならない。

     ◎期限その②「10カ月」‥相続税申告
     亡くなった方がそれなりの資産を持っていると相続税を納めなければならない。相続税は、故人の遺産が、基礎控除(3000万円+相続人数×600万円)を超える場合にかかる。その場合は、相続税法27条で「相続の開始があつたことを知つた日の翌日から10カ月以内」に相続税を申告をする必要がある。この10カ月も意外と短い。結構な量の資料を作成しないといけないので、申告は税理士に頼み、しかも、なるべく早めに相談に行くのが無難。また、税務署から請求書が来るわけではなく、自ら申告すべきことも要注意。

     ◎期限その③「3年」‥相続登記
     亡くなった方が不動産を所有している場合、その名義変更をしなければならない。不動産登記法76条の2によると、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」に相続登記(名義変更)するよう規定されている。令和6年に始まった「相続登記義務化」。これに違反すると、10万円以下の過料が来ることも知っておく必要がある。

     家族が亡くなった後、葬儀や法要、役所の手続き等で慌ただしく時が過ぎ、故人を悼む余裕がないとよく聞く。上記①はあまりゆっくりはしていられないが、3カ月以内に相続放棄をするかどうかの判断ができさえすれば、あと、財産的な手続き(銀行の預金を引き出すなど)は、仏式では四十九日を過ぎてから行うのが一般的。こうしたことを知っておいた上で、故人とのお別れや心の整理に時間を使ってほしい。(山下)

  • 曽祖父の相続

    曽祖父の相続

     令和6年に「相続登記の義務化」が始まって、「名義変更を早く終わらせなきゃ」と慌てて相談にやってくる人が増えた。

     この日は、最近父が亡くなったので、田舎の農地や山林等の相続手続きをしようと思って調べていたら、不動産の中に、名義変更がされていない「曽祖父」と「祖父」の名義の土地が一筆ずつ見つかった、という相談があった。

     多くの土地の名義は、父に変更されているのに、なぜこの2筆が残ってしまったのか、と疑問が残るが、それはさておき、今回は、「曽祖父」の相続、「祖父」の相続、そして、「父」の相続、と3つの手続きを行う必要がある。

     相続手続きを進めるためには、まず戸籍を集めて、相続人(相続の権利を持っている人)の特定を行う。最終的に、この相続人全員から署名と印鑑をもらえなければ、名義変更は終わらないことになる。曽祖父や祖父など、世代が上になればなるほど、相続人がすでに亡くなっていて、その子どもに相続権が引き継がれ、さらにその人も亡くなっていれば、さらに、その子ども…というように、相続人がどんどん増えていくことになってしまう。

     今回の相談者も、「曽祖父」の相続人は、いったい何人になってしまうのか、と心配していた。しかし、戦前の民法は「家督相続制度」があり、戸主(家長)の死亡・隠居時に、長男などの特定の「家督相続人」が戸主の地位と全財産を一人で引き継ぐことが大半。この場合、配偶者や他の子には相続権がなかった。

     その点、今回の「曽祖父」について、戸籍を見ると、曽祖父の長男である「祖父」が戸主を継いでいることが分かった。その他の子や配偶者は関係ない。結果、今回の「曽祖父」の名義変更に関わる相続人は、「祖父」の相続人と同じ、ということになり、その数は10人前後になりそうだった。

     とはいえ、曽祖父、祖父、父の名義変更をそれぞれしなければならないので、手続き費用も「3人分」となる。その相談者も「管理が大変で引き継ぐのにも二の足を踏むような田舎の土地で、しかもたった一筆のために、お金をかけないといけないのか」と嘆いていた。しかし、「でもこのまま放置すると次の世代に迷惑をかけてしまう。今なんとかしなければ」とも話していた。

     相続は、時間が経てば経つほど、関係する人も増え、費用もかさむ。来年の令和9年3月が「義務化」が始まって3年となり、相談に来る人が今年はさらに増えるだろう。しかし、「義務化」があってもなくても、相続手続きは、素早く終わらせるのが賢明だと思う。ただ、遺産分けで揉めちゃって、手続きしたくてもできないケースがあるのも、これまた事実。(山下)