『一日一笑』

  • 空き家も「相続問題」

    空き家も「相続問題」

     熊本市北区役所清水まちづくりセンター主催の、「空き家」をテーマにしたイベントに招かれ、相続漫才を披露した。

     イベントでは、A校区の地域住民が行った空き家の実態調査の報告など、熊本市の空き家の現状が紹介された。その中で、熊本市が2018年に倒壊の恐れのあるなど「危険」と認定した空き家が105件あり、その後、2023年までの間に、解体・処分などの対応が完了した空き家が39件、残る66件は未だ対応中とのこと。また、その「対応中」の半数ほどはすでに所有者が亡くなり相続が発生、相続人が複数いて手続きが進んでいないという。中には、相続人が30人以上に上る案件もあったそうだ。

     空き家になる原因は、「相続が未解決」であることが多いと、私自身も感じる。空き家になるタイミングとしては、①家主が高齢で自宅での生活が難しくなり病院や施設等に入るとき②亡くなったとき、という大きく2つのポイントがあると考える。もし家主が不在で、その後だれも住まない状況が続くのであれば、その2つのタイミングで、速やかに処分ができるように、事前の準備をしておくことがカギを握っている。

     ①については、家主(所有者)本人がその時点で重い認知症になっていると、「家・土地を売りたくても売れない」という状況が発生する。なぜなら、「売却する」には本人の意思判断能力が必要で、認知症になっているとその能力がないとされ、売買契約が結べないのだ。その状況を回避するために、家を処分する権限を、あらかじめ、例えば子どもなどに委ねておく「家族信託」を活用することがある。

     一方、②については、相続人同士が財産の分配をめぐって争うことがないように、「遺言書」の準備をしておくことが効果的。遺言書があれば、遺言書に書かれてあるとおりに財産が引き継がれ、相続手続き及び空き家の売却もスムーズに進められる。

     空き家になると、所有者及びその家族にとっては、管理が大変になるデメリットがあり、同時に、その近隣の地域及び住民にとっては、老朽化による倒壊や庭の草木の手入れ不足など環境面等の悪影響が出る。「空き家」という視点から見ても、相続への備えが重要である。(山下)

  • 「司法書士」か「自分で書く」か

    「司法書士」か「自分で書く」か

     「遺言書の作成をだれに頼むか」シリーズ第3弾。今回は、遺言書を「自分で書きたい」と考えている方に対して、「司法書士に頼む」意味とその価値についてお伝えします。

     もちろん、遺言書を「自分で書く」ことはできます。司法書士に頼めば費用がかかります。少しでも費用を抑えたいと思うならば、自分で書いてみようと考える方もいると思います。

     「司法書士に報酬を払う」というのは、単に書類の代筆を頼むのではなく、「将来のトラブルを未然に防ぐための戦略(コンサルティング)を買う」という意味合いが非常に強いです。

     前日のブログでお話しした公証役場の公証人が「形式的な正しさ」を保証するのに対し、司法書士は「あなたの家族の事情に踏み込んだ最適解」を一緒に考えてくれます。具体的にどのようなコンサルティング・メリットがあるのか、3つの視点を参考にされてください。

     1. 「争族」を未然に防ぐ遺産分割のアドバイスや気付き与える

     法律のプロとして、後々揉めそうなポイントを先回りして指摘してくれます。
     • 遺留分のシミュレーション: 「長男に家を継がせたいが、次男の遺留分を侵害していないか?」「侵害している場合、代償金(現金)をどう準備するか?」といった具体的な調整案を出してくれます。
     • 付言事項の添削: 「なぜこの配分にしたのか」という遺言者の想いを、家族が納得しやすい表現で言語化する手助けをしてくれます。

     2. 「将来の相続手続き」を見据えた正確な記述

     ここが司法書士ならではの最大の強みです。
     • 相続手続きのプロ: 遺言書は、亡くなられた後の諸手続き、例えば、「名義変更(登記)」や「預金や証券の解約」、「不動産の売却」などに使います。このとき、遺言書に書かれている記載内容が不明瞭、不正確だと、せっかくの遺言書が、手続きに使えないケースがあります。
     • 実務直結: 司法書士は「依頼を受けて手続きが滞りなく確実に実現できるか」という視点で文案を作成するため、手続きの確実性が極めて高くなります。

     3. 他の専門家との窓口機能

     司法書士は、相続実務において他業種との連携が多い職種です。
     • 税理士との連携: 相続税がかかりそうな場合、提携している税理士に意見を聞き、節税を考慮した分割案を遺言書に反映してくれます。
     • 銀行や不動産業者との調整: 預貯金の解約や不動産の売却が必要な場合、その手順も含めたトータルなアドバイスが受けられます。

     上記の視点をふまえ、以下のような状況であれば、コンサルティングを受ける価値(費用対効果)は非常に高いと言えます。
    ・不動産を持っている(特に自宅以外に土地や収益物件がある場合)
    ・節税対策や納税のための準備も考えたい。
    ・離婚、再婚で相続関係が複雑。相続人同士の話し合いをさせたくない。
    ・ 相続人の仲があまり良くない、または疎遠な相続人がいる。
    ・相続人が認知症になっている可能性が高い。または障害を持っている。意思表示できない人がいる。
    ・ 子供がいない(配偶者と自分の兄弟で分けることになり、揉めやすい)
    ・ 認知症対策も同時に考えたい(家族信託などの併用検討)

     遺言書の内容は、家族の事情に応じて千差万別、すべて異なります。それだけに注意を払うべきポイントも多岐に渡り、専門性も高くなります。一方で、一般の人が市販の本を見て、見よう見まねで、遺言書を書くこともあるわけですが、「失敗」しているケースをたくさん見てきました。遺言書は、大切な家族が後々困らないように作成するものです。であれば、「失敗」は許されないはずです。司法書士に依頼する価値を今一度検討してみてください。(宮村和)

  • 公証役場か、司法書士か

    公証役場か、司法書士か

     遺言書の作成を頼むのは、「公証役場」か「司法書士」か。きょうはこの2つに絞って、どっちに頼むのがいいのか、深く切り込んでいきます。よかったら、前回のブログ「遺言書作成をだれに頼むか」(https://x.gd/dm0Tj)ご覧ください。

     「公証役場でも遺言の相談ができますよね?とよく聞かれます。また、「司法書士に依頼するメリットは何ですか」との質問もあります。

     結論から申しますと、公証役場では、「節税」や「具体的な相続対策」のコンサルティングを受けることは、基本的にできません。

     公証役場にいる「公証人」はあくまで「遺言書の内容が法的に有効か」「本人の意思に基づいているか」をチェックし、証拠能力の高い書類を作成するのが仕事だからです。

     その意味で、「公証役場だけでは不十分」と考えます。もう少し説明します。

     1. 公証人の役割は「中立・公正」

     公証人は元裁判官や元検察官などの法律実務家であり、準公務員のような立場です。
    〈できること〉遺言者の希望を聞き、それを法的に不備のない文章(公正証書)にまとめること
    〈できないこと〉「どうすれば税金が安くなるか」「どの親族に多めに分けるのが得策か」といった、家族の中でも特定の誰か(例えば、公証役場に相談に来た人)の利益になるようなアドバイス(コンサルティング)をすること

     2. 相続税(税務)は専門外

     公証人は「民法」のプロですが、「税法」の専門家ではありません。
    〈リスク〉公証人が作成した遺言通りに分けた結果、相続税の特例が使えず税金が高くなってしまったとしても、公証人が責任を負うことはありません。分け方次第で、税負担が増減することがありますが、その部分はノータッチです。

     3. 相続対策(争い防止)の提案も限定的

     「長男と次男が揉めそうだから、こういう付言事項(メッセージ)を書いた方がいい」といった、家族関係に踏み込んだアドバイスも、中立性の観点から深くは行われません。

     では、結局、相談先・依頼先は、「公証役場」か、「司法書士」か、どっちなのか?

     理想的なのは、遺言書の「設計図」をまず専門家(司法書士)に作ってもらい、その司法書士と共に「清書」(仕上げの遺言書)を公証役場で作成する、という流れです。(宮村和)