カテゴリー: 相続相談の現場から

  • 相続税かかりますか?

    相続税かかりますか?

     「相続」というと、即座に「税金」をイメージする方が多いようだ。また、相続で財産を引き継ぐと、必ず税金がかかると思っている人も意外と多い。

     先日の相談でも、親(父)が亡くなってから数年経って、ようやく実家の名義変更を行うことになったケース。相続人全員で話し合って、母でも長男でもなく、長女が引き継ぐことになった。その際、長女から「私に税金(相続税)はいくらくらいかかりますか?」と質問を受けた。

     似たような質問を受けることがあるので、改めて、相続税の仕組みについて。大前提として、相続税は、「亡くなった人が」、「亡くなった時点で」、所有していた財産の総額が、「ある一定の金額」を超えた場合にのみ、かかる。

     その「ある一定の金額」のことを基礎控除額というが、「3000万円➕(相続人の人数✖️600万円)」という式で計算できる。例えば、上記のケースで、相続人が母、長男、長女の計3人の場合は、「3000万円➕(3人✖️600万円)=4800万円」が基礎控除額となり、父の遺産の総額が「4800万円」を超えれば、相続税がかかる。超えなければ、かからない。

     かかる方は、亡くなってから10カ月以内に相続税の申告をしなければならない。税務署から請求が来るわけではないので要注意。税理士に依頼するなどして、自ら税額を調査し、支払う必要がある。

     一方、かからない=基礎控除額を下回っている場合は、その後、財産をどう分けようが、相続税の問題は起きない。よくある誤解は、財産を引き継いだことに対して、税金がかかるというもの。つまり、財産を引き継ぐ=所得を得た、だから、相続税はかからなくても、所得税がかかる? と考えているようなのだが、相続によって得た財産にかかってくる税金は「相続税」で、引き継ぐときに、重ねて「所得税」がかかることは基本的に生じない。

     もし不安がある場合は、税理士に早めに相談しよう。ただ、知り合いに税理士がいない場合は、あかりテラスで、優しくて信頼できる税理士を紹介することもできるので、問い合わせてほしい。(山下)

  • 事前準備の大切さ

    事前準備の大切さ

     「任意後見はいつから始めたらいいのですか?」。先日の相談会で、任意後見制度の相談がありました。

     任意後見制度とは、簡単にいうと、自分自身が衰えたときのお世話を頼む「サポート役」を決めておく予約システムです。「将来、もし認知症などで判断能力が衰えてしまったら、自分のお金や生活はだれが面倒見てくれるのだろう?」。そんな不安を解消するための心強い制度です。任意後見制度は、自身とサポート役との間で結ぶ契約ですので、元気なうちしかできません。

     先日ご相談をいただいた方はまだ若くお元気であられたので、いつからはじめるべきかというご相談でした。

     人生いつ何が起こるかわかりません。

     私の父は50代後半から若年性アルツハイマーの症状が出はじめ、65歳で亡くなる前の数年間は、まったくコミュニケーションが取れない状況でした。父の状況を見ていると、判断能力が落ち始めてからでは、任意後見や相続といった、自分の身の回りの対応について考え、行動に移していくのは難しいのではないかと感じます(もちろん症状は人それぞれかと思います)。

     ただ、何が起こるかわからない人生においても、元気なうちであれば、遺言書や任意後見などの事前準備を行なうことはできます。「何かあっても大丈夫」という心の余裕は、人生を豊かにしてくれる大切な要素だと思います。

     起こっていないことに不安を感じるより、事前に準備を進めて、家族や趣味など自分の人生にとって価値があることを考える、行う時間に充てることで、より幸せな人生を過ごせるのではないかと考えます。

     私自身はすでに遺言書を書いています。これで、子どもに対する責任を一つ果たせたのかなと思っています。私に万が一のことがあった場合は、その遺言書が彼女の人生に事前準備の大切さを伝える最後の教育となると思うからです。

     いくつであっても、人生最後の瞬間がいつ来るかはわかりません。

     今回の相談は、私の父が人生を賭けて教えてくれた事前準備の大切さを、今度は、私が人生を賭けて私の子どもに伝えていきたいと、改めて考えるきっかけとなりました。「遺言書を書くことが当たり前の世の中をつくる」という言葉を実現するために、今後も活動していきます。(宮村聡)

  • 家を継ぐのは妻(母)か子か

    家を継ぐのは妻(母)か子か

     自宅の土地・建物の所有者である80代の男性が亡くなった。この家の名義、80代の妻(母)が引き継ぐべきか、それとも、50代の長男が継ぐべきか。

     答えとしてはどちらも「あり」なのだが、家族の状況によって、どちらを選択した方がいいのかが変わってくるので、整理する。

    【80代の妻(母)が継ぐ】
    〈メリット〉
    妻(母)の納得感が大きい=妻(母)にしてみれば、家は、夫と2人で築いた大切な財産。夫の死後、その権利を引き継ぐのは「当然自分だ」という気持ちは理解できる。「子どもには自分(妻)が亡くなってから渡せばいい」との声もよく聞く。

    〈デメリット〉
    手続きが2回になる=妻(母)への名義変更のあと、一般的には、近い将来、妻(母)の相続がやってくる。すると、今度は、妻(母)から子への名義変更を行うことになる。最終的に子へ名義が変わるのなら、最初の夫の相続の時に、子へ名義を変えれば、手続きが1回で済む。
    妻(母)が認知症になったら家が売れない=夫の死後、妻(母)が施設に入所することもあり得る。その際、自宅は空き家になるので、売却して、お金に替えて、次の施設での暮らしにそのお金を使う、という例もよくある。その売却の際、妻(母)が重い認知症になっていると、家の名義を持っている妻(母)が「判断能力なし」として、売買契約を行うことができなくなる。

    【50代の長男が継ぐ】
    〈メリット〉
    手続きが1回で済む=80代の夫→妻(母)へ名義変更すると、近い将来、また、妻(母)→子への名義変更をしなければならない。それを、80代の夫→子に名義を変更すれば手続きは一度で終わる。
    妻(母)が認知症になっても実家の売却ができる=妻(母)が将来認知症になった時は施設に入り、空き家になった実家は売却する、というプランを立てる家族は少なくない。その際、長男の名義になっていれば、妻(母)の健康状態に左右されず、売却をスムーズに行うことができる。ただ、売却で得たお金は、長男の収入となるため、税金面等での懸念は残る。

    〈デメリット〉
    固定資産税が発生する=名義を引き受けた人に、翌年から固定資産税の請求が来るようになる。長男が持ち家をすでに持っているような場合、実家と合わせて2件分が請求される。ただ、実家の分は、80代の妻(母)が支払うという方法もある。
    長男が勝手に売ってしまう=長男の名義になってしまえば、その実家をどう利用しようと、場合によっては、処分しようと、名義を持っている長男の一存で決めることができてしまう。あまり考えたくはないが、80代の妻(母)の意に反して、長男に実家を売られてしまって、妻(母)が住む場所を失う、という可能性も否定はできない。

     先日の相談会では、同じ日に、同様の相談が、2件続いた。1件の家族は、「子が継ぐ」、もう1件は「妻(母)が継ぐ」と、結論が分かれた。どちらが正解ということはない。上記のメリット、デメリットを家族でよく検討して、後悔のない結論を出してほしい。(山下)