「あとのこと、よろしく頼みます」。昨年末に他界されたTさんが、亡くなる2週間前に、私に電話をかけてきて、そう伝えた。さらに、「私はもう先が長くない。『私の相続はササッと終わらせなさい』と子どもたちに伝えてください」。電話口のはつらつとした声と、それとは相反するTさんの言葉に、私は混乱し、ただ黙って話を聞くしかなかった。
以前、Tさんの遺言書作成にかかわった。財産分けについては、子どもたちの気持ちに配慮した内容を本文に織り込み、さらに、子どもたち一人ひとりに対する想いを、「付言事項」の部分で表現した。
Tさんは、自身が亡くなったときの財産分けについて、遺言書で残すだけでなく、普段から、子どもたちに細かく話して聞かせていた。「そんな話をすると本当にそうなるから」と言って嫌がる子どももいたようだが、Tさんは自分の考えをしっかり伝えていた。
ここまでしていれば、相続のときに、残された子どもたちが判断に迷うことはない。「親がそう言っていたから」。これが基準になる。これで全てが決まる。遺言書で文書として残すことはもちろん大事だが、話し言葉で伝えておくことも同じくらい大切だと感じた。(山下)



