カテゴリー: 相続相談の現場から

  • 固定資産税の納税通知書

    固定資産税の納税通知書

     不動産を所有している人には、毎年5月ごろ、その年度に支払う固定資産税の案内(納税通知書)が届く。たいていの人は「今年はいくらか」「昨年より上がっているか。それとも下がっているか」という点を確認して終わり。支払いを口座引き落としにしている人の中には、中身もよく見ずにそのままゴミ箱、という人もいると聞く。

     でも、この納税通知書には、いろいろな情報が隠されているので、少しひも解いていこう。

     まず、その自治体の中に所有している不動産の状況(数や場所)を全て把握することができる。家族の中で分かるものもあれば、「これはいったいどこの土地?」などと、よく分からない不動産が出てくることがある。

     また、熊本市の場合は、課税されていない不動産は、この納税通知書の一覧に載っていないことがあるので、注意が必要。特に、漏れやすいのは、私道。県道や市道などの大きな道路から、家の前に入るまでの小さい道路(私道)を、近所の人たち複数人と共同名義で所有しているケースがある。その場合は、固定資産税を課税されていないことが多く、この納税通知書に載らないことがある。

     これで困るのが、相続が起きた時。亡くなった人の不動産はこの納税通知書に載っているのが全てだろうと思って、その分だけ、手続きしてしまうと、後で「私道の名義を変え忘れた」ということが起きてしまう。この場合は、役所・役場で、「資産証明書」「名寄帳」という名称(役所によって呼び名が違うので要注意)の証明書を取得して、手続き漏れがないようにしないといけない。

     固定資産税の納税通知書のもう一つの機能は、「評価額」を知ることができること。数字がいっぱい並んでいるので分かりにくいかもしれないが、項目をよくみてもらうと、物件ごとに「評価額」が記載されている。

     このとき、評価額を見て「意外と安い」と落胆しないでほしい。一般的に、固定資産税の評価額は「時価」の7割と言われていて、実際に売り買いするときの値段とは違う(宅地の場合はたいてい評価額を上回る)ことも理解しておきたい。ただ、おおまかな時価を知る目安にはなる。

     あと、固定資産税を支払っている人と、実際の所有者が異なることが時々ある。「固定資産税を支払っているから、私の名義だ」と勘違いして、実際に調べてみると、親の名義のままだったということもある。

     また、私たちのような専門家から、「固定資産税の納税通知書を見せてください」と言われたときは、①登記(名義変更)の見積書を作るため②不動産の数や場所を確認するため、この2点の目的があることも知っておいてほしい。手続きにかかる費用を出す際に、法務局に支払う印紙代(登録免許税)は、不動産の「評価額」を元に算定するし、事務所の報酬は、不動産の数に応じて決まるケースが多い。

     これらの内容をふまえて、改めて、固定資産税の納税通知書に目を通してほしい。新たな発見があるかもしれない。(山下)

  • 曽祖父の相続

    曽祖父の相続

     令和6年に「相続登記の義務化」が始まって、「名義変更を早く終わらせなきゃ」と慌てて相談にやってくる人が増えた。

     この日は、最近父が亡くなったので、田舎の農地や山林等の相続手続きをしようと思って調べていたら、不動産の中に、名義変更がされていない「曽祖父」と「祖父」の名義の土地が一筆ずつ見つかった、という相談があった。

     多くの土地の名義は、父に変更されているのに、なぜこの2筆が残ってしまったのか、と疑問が残るが、それはさておき、今回は、「曽祖父」の相続、「祖父」の相続、そして、「父」の相続、と3つの手続きを行う必要がある。

     相続手続きを進めるためには、まず戸籍を集めて、相続人(相続の権利を持っている人)の特定を行う。最終的に、この相続人全員から署名と印鑑をもらえなければ、名義変更は終わらないことになる。曽祖父や祖父など、世代が上になればなるほど、相続人がすでに亡くなっていて、その子どもに相続権が引き継がれ、さらにその人も亡くなっていれば、さらに、その子ども…というように、相続人がどんどん増えていくことになってしまう。

     今回の相談者も、「曽祖父」の相続人は、いったい何人になってしまうのか、と心配していた。しかし、戦前の民法は「家督相続制度」があり、戸主(家長)の死亡・隠居時に、長男などの特定の「家督相続人」が戸主の地位と全財産を一人で引き継ぐことが大半。この場合、配偶者や他の子には相続権がなかった。

     その点、今回の「曽祖父」について、戸籍を見ると、曽祖父の長男である「祖父」が戸主を継いでいることが分かった。その他の子や配偶者は関係ない。結果、今回の「曽祖父」の名義変更に関わる相続人は、「祖父」の相続人と同じ、ということになり、その数は10人前後になりそうだった。

     とはいえ、曽祖父、祖父、父の名義変更をそれぞれしなければならないので、手続き費用も「3人分」となる。その相談者も「管理が大変で引き継ぐのにも二の足を踏むような田舎の土地で、しかもたった一筆のために、お金をかけないといけないのか」と嘆いていた。しかし、「でもこのまま放置すると次の世代に迷惑をかけてしまう。今なんとかしなければ」とも話していた。

     相続は、時間が経てば経つほど、関係する人も増え、費用もかさむ。来年の令和9年3月が「義務化」が始まって3年となり、相談に来る人が今年はさらに増えるだろう。しかし、「義務化」があってもなくても、相続手続きは、素早く終わらせるのが賢明だと思う。ただ、遺産分けで揉めちゃって、手続きしたくてもできないケースがあるのも、これまた事実。(山下)

  • 「頼れる人」を見つける意味

    「頼れる人」を見つける意味

    「おひとりさま」という言葉をよく聞く。「身寄りのない人」とほぼ同義と理解しているが、「身寄りがない」にも2種類ある。①そもそも親戚が全くいない②親戚はいるが疎遠または関わりたくない。

     おひとりさまが抱えるさまざまな不安を解消できるかどうかの最大の分かれ目は、「頼れる人がいるか否か」。頼れる人が1人いるだけで、準備できることは格段に増える。いなければ、工夫が必要だ。

     頼れる人は、何も血のつながりがある必要はない。友だち、かつての同僚、隣近所の人々などなど。私がかつて関わった「おひとりさま」の中には、自身が亡くなった後にペットを託す人を探す中で、その引き受けてくれる方と意気投合して大親友となり、その方がペットの世話だけでなく、本人の身の回りの世話から看取りまで行った、ということがあった。

     八方探してみたけれど、頼れる人がやっぱりいない、ということもあるだろう。その場合は、専門家(士業)という手もある。気の合う専門家をぜひ探してみてほしい。

    そこまでしてなぜ「頼れる人」を見つけるべきかというと、それによって「自由」を手にいれることができるから。「頼れる人」は、「自分の伴走者」。自分が亡くなるまで、そして、亡くなった後のことに至るまで、伴走者の力を借りて、あらゆることに自分の意思を貫いて、決めて、自分の人生を生ききってほしいと願うから。(山下)