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  • ケアマネさんがやって来た(「作戦」その③)

    ケアマネさんがやって来た(「作戦」その③)

     実家にケアマネさんがやって来た。母に介護保険証が届いて最初の面談。本人の様子の確認と、今後どんなサービスを利用していくのかの希望調査といったところだ。

     母の現状はおおむね元気で、今回の要介護認定では、「要支援」にも該当しなかったため、自治体独自の事業を利用する。耳がとても遠いものの、集音器を付けて、質問されたことにテキパキ答える母に、ケアマネさんも「とてもお元気ですね」と太鼓判を押していた。

     とはいえ、介護(介護予防)サービスの利用に踏み切ったのには、大きく2つ理由がある。

     一つは、下半身の筋力強化。ここ数年、自宅周辺で数回転倒し骨折、入院を繰り返した。今では普通に歩けるようになっているが、今後そうしたリスクを回避できるように、足腰を鍛えていければと考えている。

     もう一つは、認知症の進行を遅らせる、あるいは、止めること。年相応に物忘れもするし、時々妄想、幻覚、幻聴を訴えることがある。自動車の運転は元々しないし、家の近所に公共交通機関もないため、買い物や通院にもタクシーが必要になる場所に住んでいる。そのため、一日中家に閉じこもっていることが多い。

     そこで、週に1回でも、外に出て、人と交流する機会を作る。そうすることで、気分も晴れるし、脳の機能を活性化できるだろうと考えている。

     ケアマネさんの面談も順調に終わり、利用する介護サービスの内容と事業所も決まった。次回は、その事業所さんとの打ち合わせを行うことになった。

     一方、気になることがあった。母に介護サービスを利用してもらう今回の「作戦」を遂行する上で、最初の窓口となった「地域包括支援センター」(以下、「地域包括」という。)で、私は、母の状況を詳しく伝える中で、母が機嫌を損ねるNGワードを強調してお伝えしていた。「その名前だけは、出さないで。母が警戒するかもしれないので」と。

     そのNGワードとは、以前入院していた「病院名」なのだが、そこで母は嫌な思いをしたらしい(これもたぶん妄想だと思われるのだが、本人からしたら「現実」で、私に時々そのときの「経験」を、さもあったかのように、事細かに訴えることがある)。この日のケアマネさんは、地域包括から紹介されたのだが、そのNGワードを面談の際にぽろっと口にしてしまった。

     私は慌ててごまかしたが、ケアマネさんはそれが「NGワード」とは知らなかったようだ。引き継ぎを受けていなかったらしい。しかも、この日実家の住所の番地を地域包括から事前に聞いておらず、直前に私の携帯に電話がかかってきて、私が誘導した。そんなことある?

     本当はもうちょっといろいろあるのだが(笑)、小言はこの辺で。いずれにしても、母の介護サービス利用大作戦は、いたって順調。母が目的をきちんと理解し、今の自分に必要なことだ、と納得して、サービスを利用しようとしていることを、とてもうれしく思う。(山下)

  • 介護サービス利用大作戦その①

    介護サービス利用大作戦その①

     私の母は86歳。大分県在住。自分では「まだまだ元気」と言っているが、一昨年の冬に、庭先でつまずき、膝のお皿の骨にヒビが入って、一カ月入院した。何より耳が遠い。会話の際は、こちらが大声を張り上げないといけない。そのくせ話好きで、やたらと話しかけてくる。大層疲れる。だから「集音器つけて」と頼む。補聴器はなぜか作ろうとしない。年相応に物忘れもある。

     父が8年前に亡くなってから母は一人で生活している。だから、近くにいる母のきょうだいが心配して、「そろそろ施設に入ることも考えたら?」と言うと、「私は認知症ではない。施設に頼らなくても大丈夫だ」と怒る。認知症のワードに敏感。プライド高め。かと思えば、「将来は施設に入れてくれ」とも。言うことが揺れ動く。

     私も熊本にいて、ひと月かふた月に1回くらいしか、会いに行けない。だから、母の介護準備が、思いはあるものの、今までなかなか進まなかった。介護準備というのは、母が介護が必要な状態にならないように、予防していくこと。具体的には、一日中家に閉じこもっている母に、地域のサロンやデイサービスを利用して、家の外に出て、人と交流してもらったり、弱ってきた足腰を鍛える筋力トレーニングを行ってもらったりすることをイメージしていた。

     ただ、母の自尊心を傷つけないように、そして、できれば「気持ちよく」、どうやったら、そういった介護予防のサービスなどを利用してもらえるか。この難題を、私なりに一生懸命考え続けた。「作戦」を練りに練って、いつか来る「決行」の日に備えていた。

     昨秋、母と墓参りに行った。そのとき、山中にあるお墓の入り口で、母が転倒した。この場所で母が転ぶのは、幼い頃から何度も一緒に来ているが、初めてだった。「よし、今だ」。「作戦決行」の日を、その日と決めた。墓参の後、私は実家に帰り着いてから、いよいよ母に「作戦」の内容を話し始めた。(つづく)(山下)