カテゴリー: 相続相談の現場から

  • 曽祖父の相続

    曽祖父の相続

     令和6年に「相続登記の義務化」が始まって、「名義変更を早く終わらせなきゃ」と慌てて相談にやってくる人が増えた。

     この日は、最近父が亡くなったので、田舎の農地や山林等の相続手続きをしようと思って調べていたら、不動産の中に、名義変更がされていない「曽祖父」と「祖父」の名義の土地が一筆ずつ見つかった、という相談があった。

     多くの土地の名義は、父に変更されているのに、なぜこの2筆が残ってしまったのか、と疑問が残るが、それはさておき、今回は、「曽祖父」の相続、「祖父」の相続、そして、「父」の相続、と3つの手続きを行う必要がある。

     相続手続きを進めるためには、まず戸籍を集めて、相続人(相続の権利を持っている人)の特定を行う。最終的に、この相続人全員から署名と印鑑をもらえなければ、名義変更は終わらないことになる。曽祖父や祖父など、世代が上になればなるほど、相続人がすでに亡くなっていて、その子どもに相続権が引き継がれ、さらにその人も亡くなっていれば、さらに、その子ども…というように、相続人がどんどん増えていくことになってしまう。

     今回の相談者も、「曽祖父」の相続人は、いったい何人になってしまうのか、と心配していた。しかし、戦前の民法は「家督相続制度」があり、戸主(家長)の死亡・隠居時に、長男などの特定の「家督相続人」が戸主の地位と全財産を一人で引き継ぐことが大半。この場合、配偶者や他の子には相続権がなかった。

     その点、今回の「曽祖父」について、戸籍を見ると、曽祖父の長男である「祖父」が戸主を継いでいることが分かった。その他の子や配偶者は関係ない。結果、今回の「曽祖父」の名義変更に関わる相続人は、「祖父」の相続人と同じ、ということになり、その数は10人前後になりそうだった。

     とはいえ、曽祖父、祖父、父の名義変更をそれぞれしなければならないので、手続き費用も「3人分」となる。その相談者も「管理が大変で引き継ぐのにも二の足を踏むような田舎の土地で、しかもたった一筆のために、お金をかけないといけないのか」と嘆いていた。しかし、「でもこのまま放置すると次の世代に迷惑をかけてしまう。今なんとかしなければ」とも話していた。

     相続は、時間が経てば経つほど、関係する人も増え、費用もかさむ。来年の令和9年3月が「義務化」が始まって3年となり、相談に来る人が今年はさらに増えるだろう。しかし、「義務化」があってもなくても、相続手続きは、素早く終わらせるのが賢明だと思う。ただ、遺産分けで揉めちゃって、手続きしたくてもできないケースがあるのも、これまた事実。(山下)

  • 「頼れる人」を見つける意味

    「頼れる人」を見つける意味

    「おひとりさま」という言葉をよく聞く。「身寄りのない人」とほぼ同義と理解しているが、「身寄りがない」にも2種類ある。①そもそも親戚が全くいない②親戚はいるが疎遠または関わりたくない。

     おひとりさまが抱えるさまざまな不安を解消できるかどうかの最大の分かれ目は、「頼れる人がいるか否か」。頼れる人が1人いるだけで、準備できることは格段に増える。いなければ、工夫が必要だ。

     頼れる人は、何も血のつながりがある必要はない。友だち、かつての同僚、隣近所の人々などなど。私がかつて関わった「おひとりさま」の中には、自身が亡くなった後にペットを託す人を探す中で、その引き受けてくれる方と意気投合して大親友となり、その方がペットの世話だけでなく、本人の身の回りの世話から看取りまで行った、ということがあった。

     八方探してみたけれど、頼れる人がやっぱりいない、ということもあるだろう。その場合は、専門家(士業)という手もある。気の合う専門家をぜひ探してみてほしい。

    そこまでしてなぜ「頼れる人」を見つけるべきかというと、それによって「自由」を手にいれることができるから。「頼れる人」は、「自分の伴走者」。自分が亡くなるまで、そして、亡くなった後のことに至るまで、伴走者の力を借りて、あらゆることに自分の意思を貫いて、決めて、自分の人生を生ききってほしいと願うから。(山下)

  • 遺言書作成をだれに頼むか

    遺言書作成をだれに頼むか

     遺言書の作成をする際、①自分1人で作るか②公証役場に行くか③司法書士や行政書士に頼むか。

     コスト面を重視すれば、低い順に①→②→③となる。①は、ネットの参照文を見たりしながら作れないことはないだろうが、内容が法的に問題ないか不安が残る。

     ①に比べ、②は法的に問題ないものができるが、遺言の作成者やその家族にとって、本当に最善の内容になっているのか(財産が渡った後の配慮やもめないための工夫など)について、公証役場側が作成時にどこまで説明したり、提案したりされたか、といった点まで考えると、なかなか難しい面もあるだろう。

     この日の相談は、子どものいない夫婦が、公証役場で、お互いに遺言書を完成させたケースだった。夫死亡時は全て妻に、妻死亡時は全て夫に。遺言書がない場合は、それぞれの兄弟姉妹に相続権が発生するため、子どものいない夫婦は遺言書がマスト。ここまではよかった。

     しかし、それだけでは足りない。なぜなら、夫婦であれば、通常どちらかが必ず先に亡くなる。たとえば、夫が先に亡くなった場合、次の妻の時は、遺言書に「全て夫に」と書いてある。しかし、その時すでに夫はこの世にいない。妻が遺言書で渡したかった夫がいない場合は、通常相続となり、妻の兄弟姉妹(親はいないと仮定)に相続権が発生する。

     今回は、兄弟姉妹に絶対相続させたくないケースだった。その場合は、「妻が先に亡くなっていた場合は次に●●(たとえばお世話になった人や団体など)に渡したい」という「第2希望」を、最初の遺言書の中にきちんと入れておかなければいけなかった。公証役場で作っても、この点が見落とされた。近々作り直しを検討するという。

     結局、遺言書を作る人と経験豊富な専門家とがじっくり話をしながら、いろんな状況を想定して作成できる③がおすすめだし、さらに言うと、③→②のコースなら万全。

     遺言書の内容は、家族ごとに「正解」が異なる。家族の状況も違えば、財産の内容も違う。遺言書の最大の価値が、遺言を作る人の希望を最大限反映し、同時に、将来の家族が円満に生活できること、とを両立させることにあるならば、多少費用を投じてでも、専門家と一緒に作り上げることを推奨したい。(山下)