カテゴリー: 相続相談の現場から

  • 山は、いらない

    山は、いらない

     田舎の山林や田畑を、親から引き継いだ(または引き継ぐ予定)が、正直いらない、管理できない、どうしたらいいか、という相談が、最近とても増えている。

     昔は、山そのものが資産だった。「いざというときは、木を売れば、お金になる」「家を建てるときは、山の木を使えばいい」。そんな話を、私も亡き父から聞いた記憶がある。

     しかし、時代が変わった。山がある田舎に、そもそも後継者は住んでいない。子どもは全て、生まれ育った田舎を離れ、都市部で暮らす。そんなことが当たり前の時代になった。我が家も例外ではない。

     そうなった時に困るのは、山の管理。所有者である以上、最低限の手入れをしないと、近隣や地域に迷惑をかけるかもしれない。ほったらかしにはできない。そして、固定資産税がかかる。しかし、そもそも、所有している山がどこにあって、その境界が、どこからどこまでか、全く知らない。

     自分はまだしも、子どもにいたっては、そこに住んだこともない。相談者が異口同音に言われるのが「子や孫には引き継がせられない」。気持ちは分かる。

     同じような悩みを抱えている人に、アドバイス。まず、処分したいと決めたら、できるだけ早く情報収集を始めること。最初は、親戚や土地がある地域住民にひたすら聞いて回る。不動産業者や行政に任せず、自分の足で情報を集めることをお勧めする。

     そして、その土地を手放す際も、買ってくれればベストだが、いなければ無償でもらってくれる人を探そう。それでも、現実には、なかなか引き取り手が見つかるものではない。そして、最後の最後は、土地を持っている側が、相手にお金を出して引き取ってもらう。今はそんな時代になっている。

     最後の最後の手段で、お金を支払ってでも手放したい場合は、方法が2種類ある。一つは、相続土地国庫帰属制度を利用する。お金がかかるが、条件をクリアすれば、国が引き取ってくれる。もう一つは、民間団体に引き取ってもらう。民間団体の引き取りについては、あかりテラスでも相談に乗ることができる。無料で査定を行なっているので、関心がある人は問い合わせしてほしい。(https://souzokuhozen.com/

     それにしても、あと20年もしたら、日本中の「山」はどうなるのだろうか。(山下)

  • 介護サービス利用大作戦その②

    介護サービス利用大作戦その②

     「いつまでも自分の足で歩きたいよね」「ずっと元気でいてほしいとボクも思ってるから」。お墓で転んだ母に、私は伝えた。そして、「今のうちから足の筋肉を鍛えておくといいよ」と畳み掛けると、母は「そうだね」とうなずいた。

     「介護保険を使うと、そういう筋トレのサービスに安く行けるよ、週に1回とかでいいから行ってみる?」。確実に年老いているくせに、老人扱いすると機嫌を損ねる母である。「デイサービス」や「介護」という言葉を極力使わないようにして、母の答えをドキドキしながら待った。

     すると、「それなら行ってみようかな」。ホッ。こうして、要介護(要支援)認定の手続きを進める段取りを始めることにした。そして、次のハードル。手続きを担う地域包括支援センター(以下、「地域包括」という。)の相談員に実家に来てもらい、母の様子の観察と、手続きの説明をしてもらう必要がある。

     私は、母に会わせる前に、事前に地域包括に行き、母の最近の状態(認知症が疑われる言動があることや転んだこと)を説明。また、「地域包括から来た」、というと、母に怪しまれる可能性があったため、「市役所から来た」と言ってもらうことも了承を取り付けた。母のことをある程度知ってもらってから、当日を迎えることができた。

     当日は、地域包括の相談員の優しい口調の対応もあり、母が想像以上によくしゃべって、面談はつつがなく終了、書類にもサインした。「自分はまだまだ元気」と気を張る母に対し、介護にならないような仕掛けを日常生活に自然と組み込むため、提案するタイミングを見計らいながら、関係各所の協力もいただきつつ進めた、今回の「介護サービス利用大作戦」。見事にコンプリート(完了)した。

     近々、ケアマネジャーさんが実家に来て、具体的なサービスについて話し合うことになっている。母の足の筋力を付けて、介護を予防するだけでなく、外に出る機会ができ、一人暮らしの母に、いろんな人が関わるようになっていくことをとてもうれしく思っている。

     「介護保険証が家に届いていませんか?」。年が明けて、地域包括の方から私に電話がかかってきた。母に聞いたところ、「そんなのは来ていない」。よくよく確認してもらったところ、実際には届いていた。そして、母曰く「今度からこれを病院に持って行ったらいいの?」。なるほど。「健康保険証」と勘違いしていたらしい。確かに、昔の健康保険証って、こんな感じだったよね。(山下)

  • 固定資産税の納税通知書

    固定資産税の納税通知書

     不動産を所有している人には、毎年5月ごろ、その年度に支払う固定資産税の案内(納税通知書)が届く。たいていの人は「今年はいくらか」「昨年より上がっているか。それとも下がっているか」という点を確認して終わり。支払いを口座引き落としにしている人の中には、中身もよく見ずにそのままゴミ箱、という人もいると聞く。

     でも、この納税通知書には、いろいろな情報が隠されているので、少しひも解いていこう。

     まず、その自治体の中に所有している不動産の状況(数や場所)を全て把握することができる。家族の中で分かるものもあれば、「これはいったいどこの土地?」などと、よく分からない不動産が出てくることがある。

     また、熊本市の場合は、課税されていない不動産は、この納税通知書の一覧に載っていないことがあるので、注意が必要。特に、漏れやすいのは、私道。県道や市道などの大きな道路から、家の前に入るまでの小さい道路(私道)を、近所の人たち複数人と共同名義で所有しているケースがある。その場合は、固定資産税を課税されていないことが多く、この納税通知書に載らないことがある。

     これで困るのが、相続が起きた時。亡くなった人の不動産はこの納税通知書に載っているのが全てだろうと思って、その分だけ、手続きしてしまうと、後で「私道の名義を変え忘れた」ということが起きてしまう。この場合は、役所・役場で、「資産証明書」「名寄帳」という名称(役所によって呼び名が違うので要注意)の証明書を取得して、手続き漏れがないようにしないといけない。

     固定資産税の納税通知書のもう一つの機能は、「評価額」を知ることができること。数字がいっぱい並んでいるので分かりにくいかもしれないが、項目をよくみてもらうと、物件ごとに「評価額」が記載されている。

     このとき、評価額を見て「意外と安い」と落胆しないでほしい。一般的に、固定資産税の評価額は「時価」の7割と言われていて、実際に売り買いするときの値段とは違う(宅地の場合はたいてい評価額を上回る)ことも理解しておきたい。ただ、おおまかな時価を知る目安にはなる。

     あと、固定資産税を支払っている人と、実際の所有者が異なることが時々ある。「固定資産税を支払っているから、私の名義だ」と勘違いして、実際に調べてみると、親の名義のままだったということもある。

     また、私たちのような専門家から、「固定資産税の納税通知書を見せてください」と言われたときは、①登記(名義変更)の見積書を作るため②不動産の数や場所を確認するため、この2点の目的があることも知っておいてほしい。手続きにかかる費用を出す際に、法務局に支払う印紙代(登録免許税)は、不動産の「評価額」を元に算定するし、事務所の報酬は、不動産の数に応じて決まるケースが多い。

     これらの内容をふまえて、改めて、固定資産税の納税通知書に目を通してほしい。新たな発見があるかもしれない。(山下)