『一日一笑』

  • 介護サービス利用大作戦その②

    介護サービス利用大作戦その②

     「いつまでも自分の足で歩きたいよね」「ずっと元気でいてほしいとボクも思ってるから」。お墓で転んだ母に、私は伝えた。そして、「今のうちから足の筋肉を鍛えておくといいよ」と畳み掛けると、母は「そうだね」とうなずいた。

     「介護保険を使うと、そういう筋トレのサービスに安く行けるよ、週に1回とかでいいから行ってみる?」。確実に年老いているくせに、老人扱いすると機嫌を損ねる母である。「デイサービス」や「介護」という言葉を極力使わないようにして、母の答えをドキドキしながら待った。

     すると、「それなら行ってみようかな」。ホッ。こうして、要介護(要支援)認定の手続きを進める段取りを始めることにした。そして、次のハードル。手続きを担う地域包括支援センター(以下、「地域包括」という。)の相談員に実家に来てもらい、母の様子の観察と、手続きの説明をしてもらう必要がある。

     私は、母に会わせる前に、事前に地域包括に行き、母の最近の状態(認知症が疑われる言動があることや転んだこと)を説明。また、「地域包括から来た」、というと、母に怪しまれる可能性があったため、「市役所から来た」と言ってもらうことも了承を取り付けた。母のことをある程度知ってもらってから、当日を迎えることができた。

     当日は、地域包括の相談員の優しい口調の対応もあり、母が想像以上によくしゃべって、面談はつつがなく終了、書類にもサインした。「自分はまだまだ元気」と気を張る母に対し、介護にならないような仕掛けを日常生活に自然と組み込むため、提案するタイミングを見計らいながら、関係各所の協力もいただきつつ進めた、今回の「介護サービス利用大作戦」。見事にコンプリート(完了)した。

     近々、ケアマネジャーさんが実家に来て、具体的なサービスについて話し合うことになっている。母の足の筋力を付けて、介護を予防するだけでなく、外に出る機会ができ、一人暮らしの母に、いろんな人が関わるようになっていくことをとてもうれしく思っている。

     「介護保険証が家に届いていませんか?」。年が明けて、地域包括の方から私に電話がかかってきた。母に聞いたところ、「そんなのは来ていない」。よくよく確認してもらったところ、実際には届いていた。そして、母曰く「今度からこれを病院に持って行ったらいいの?」。なるほど。「健康保険証」と勘違いしていたらしい。確かに、昔の健康保険証って、こんな感じだったよね。(山下)

  • 介護サービス利用大作戦その①

    介護サービス利用大作戦その①

     私の母は86歳。大分県在住。自分では「まだまだ元気」と言っているが、一昨年の冬に、庭先でつまずき、膝のお皿の骨にヒビが入って、一カ月入院した。何より耳が遠い。会話の際は、こちらが大声を張り上げないといけない。そのくせ話好きで、やたらと話しかけてくる。大層疲れる。だから「集音器つけて」と頼む。補聴器はなぜか作ろうとしない。年相応に物忘れもある。

     父が8年前に亡くなってから母は一人で生活している。だから、近くにいる母のきょうだいが心配して、「そろそろ施設に入ることも考えたら?」と言うと、「私は認知症ではない。施設に頼らなくても大丈夫だ」と怒る。認知症のワードに敏感。プライド高め。かと思えば、「将来は施設に入れてくれ」とも。言うことが揺れ動く。

     私も熊本にいて、ひと月かふた月に1回くらいしか、会いに行けない。だから、母の介護準備が、思いはあるものの、今までなかなか進まなかった。介護準備というのは、母が介護が必要な状態にならないように、予防していくこと。具体的には、一日中家に閉じこもっている母に、地域のサロンやデイサービスを利用して、家の外に出て、人と交流してもらったり、弱ってきた足腰を鍛える筋力トレーニングを行ってもらったりすることをイメージしていた。

     ただ、母の自尊心を傷つけないように、そして、できれば「気持ちよく」、どうやったら、そういった介護予防のサービスなどを利用してもらえるか。この難題を、私なりに一生懸命考え続けた。「作戦」を練りに練って、いつか来る「決行」の日に備えていた。

     昨秋、母と墓参りに行った。そのとき、山中にあるお墓の入り口で、母が転倒した。この場所で母が転ぶのは、幼い頃から何度も一緒に来ているが、初めてだった。「よし、今だ」。「作戦決行」の日を、その日と決めた。墓参の後、私は実家に帰り着いてから、いよいよ母に「作戦」の内容を話し始めた。(つづく)(山下)

  • 固定資産税の納税通知書

    固定資産税の納税通知書

     不動産を所有している人には、毎年5月ごろ、その年度に支払う固定資産税の案内(納税通知書)が届く。たいていの人は「今年はいくらか」「昨年より上がっているか。それとも下がっているか」という点を確認して終わり。支払いを口座引き落としにしている人の中には、中身もよく見ずにそのままゴミ箱、という人もいると聞く。

     でも、この納税通知書には、いろいろな情報が隠されているので、少しひも解いていこう。

     まず、その自治体の中に所有している不動産の状況(数や場所)を全て把握することができる。家族の中で分かるものもあれば、「これはいったいどこの土地?」などと、よく分からない不動産が出てくることがある。

     また、熊本市の場合は、課税されていない不動産は、この納税通知書の一覧に載っていないことがあるので、注意が必要。特に、漏れやすいのは、私道。県道や市道などの大きな道路から、家の前に入るまでの小さい道路(私道)を、近所の人たち複数人と共同名義で所有しているケースがある。その場合は、固定資産税を課税されていないことが多く、この納税通知書に載らないことがある。

     これで困るのが、相続が起きた時。亡くなった人の不動産はこの納税通知書に載っているのが全てだろうと思って、その分だけ、手続きしてしまうと、後で「私道の名義を変え忘れた」ということが起きてしまう。この場合は、役所・役場で、「資産証明書」「名寄帳」という名称(役所によって呼び名が違うので要注意)の証明書を取得して、手続き漏れがないようにしないといけない。

     固定資産税の納税通知書のもう一つの機能は、「評価額」を知ることができること。数字がいっぱい並んでいるので分かりにくいかもしれないが、項目をよくみてもらうと、物件ごとに「評価額」が記載されている。

     このとき、評価額を見て「意外と安い」と落胆しないでほしい。一般的に、固定資産税の評価額は「時価」の7割と言われていて、実際に売り買いするときの値段とは違う(宅地の場合はたいてい評価額を上回る)ことも理解しておきたい。ただ、おおまかな時価を知る目安にはなる。

     あと、固定資産税を支払っている人と、実際の所有者が異なることが時々ある。「固定資産税を支払っているから、私の名義だ」と勘違いして、実際に調べてみると、親の名義のままだったということもある。

     また、私たちのような専門家から、「固定資産税の納税通知書を見せてください」と言われたときは、①登記(名義変更)の見積書を作るため②不動産の数や場所を確認するため、この2点の目的があることも知っておいてほしい。手続きにかかる費用を出す際に、法務局に支払う印紙代(登録免許税)は、不動産の「評価額」を元に算定するし、事務所の報酬は、不動産の数に応じて決まるケースが多い。

     これらの内容をふまえて、改めて、固定資産税の納税通知書に目を通してほしい。新たな発見があるかもしれない。(山下)