父がまだ元気(母はすでに死亡)なのに、2人兄弟の弟の元に、兄から「父の遺産分割協議書」なるものが届いた。それも近日中に「印鑑を押して返事せよ」とのこと。弟は「返さないといけないのか」と困惑し、相談に来られた。
もし、弟が署名・押印して、返信したとしても、この書面自体に法的な効力はない。理由は、まだ父が亡くなっていないから。「遺産」分割というくらいだから、亡くなった時点で残っていた財産=遺産が、協議の対象であり、まだ元気な父がこの先亡くなるまでの間に、自分の財産をどんどん消費したり、処分したりする可能性はいくらでもある。父がまだ元気なうちは、「遺産」が確定できない。なのに、それをどう分けるかの話し合いは、ナンセンスということだ。
しかも、遺産分割協議は、「相続人」が全員で行わなければならない。その相続人も、父が亡くなった時点が基準で、だれが相続人であるかが決まる。今後、父より先に子どもが亡くなることもあり得るし、そうなったときは、相続人のメンバー構成が大きく変わる可能性がある。
今回のケース、兄はどんな考えで、弟にこのような書面を送りつけてきたのか不明だ。弟曰く「私が父のそばで面倒を見ているからちゃんと財産が残されるのか心配になったのでは」。一方、すでに父は遺言書を作成しているとのこと。ただ、それは、手書きの遺言書ということだったので、できれば今からでも公正証書で作成するよう勧めた。兄の今回の行動は、将来の相続争いの予兆とも取れる。それだけに、慎重に、確実に準備しておくことが肝要である。(山下)



