カテゴリー: 相続相談の現場から

  • 遺産を寄付する

    遺産を寄付する

     遺贈寄付(いぞうきふ)への関心が高まっている。遺贈寄付とは、亡くなった時の財産の全部または一部を、遺言書を通じて寄付をすること。遺産は、一般的に家族が受け継ぐイメージがあるだろうが、遺言書に書いておけば、家族以外の第三者、例えば、社会のために活動しているNPO法人等に渡すこともできる。

     あかりテラスでも、遺贈寄付を内容とする遺言書の作成に、これまで多く関わってきた。ある方は、親族がいたものの、阿蘇の野焼きを守る活動を行う団体に、財産を全て寄付した。他にも、家族がかつて何度も救急車で運ばれて命を助けてもらったことへの恩返しとして、消防局への寄付を希望された方、また、子どもが大好きだからという理由で子ども食堂へ財産を渡すことを決めた方もいた。

     遺贈寄付のいいところの一つは、老後の資金を心配しなくていいこと。普通の寄付は、生きている間に、一定額を渡すわけだが、渡してしまったばかりに、その後の自分の生活資金にしわ寄せが来てしまう可能性がある。一方、遺贈寄付は、亡くなった時に「財産が残った場合」に初めて実施できる。まずは、自分の人生で財産をしっかり使って、亡くなったときに「残れば寄付」。遺言書に「寄付する」って書いちゃったから、その分財産を取っておかなくちゃいけない、と考える必要はない。

     遺贈寄付への関心が高まっている背景には、子どもがいないなど、遺産を相続する家族がいない、いわゆる「おひとりさま」が増えているということがある。親族の中に法律上の相続人がいないと、遺産は国庫に帰属する。国に召し上げられてしまうくらいなら、自分が希望するところにお金を回したい、という意識が表れているようだ。

     この遺贈寄付によって、自分の財産を、自分らしい形で、未来の社会に贈ることができる。人生の集大成としての社会貢献。遺贈寄付をぜひたくさんの人に知ってほしい。興味のある方には、冊子(写真)を提供しているので、一度ご相談を。(山下)

  • 3つの期限

    3つの期限

     相続の手続きで、期限が設けられているものが、主に「3つ」ある。「3つしかない」とも言える。家族が亡くなられて「相続の手続きを急いでしないといけないんでしょ?」と、葬儀後まもなく、相談にくる人もいるが、とりあえずこの3つだけ押さえてほしい。

     ◎期限その①「3カ月」‥相続放棄
     亡くなった方に借金があるような場合、相続人がその借金を相続しなくて済むように、「相続放棄」の手続きを取ることがある。相続放棄の期限は、民法915条で「自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」とある。3カ月は相当短い。借金などマイナスの財産が、預貯金などプラスの財産を上回るかどうか、故人の預金通帳の返済履歴や消費者金融からの郵便物等で、早めに判断する必要がある。また、故人の配偶者や子が相続放棄した場合、次の相続順位である、親や兄弟姉妹に、相続権が移ることにも注意が必要。その人たちも順次相続放棄の手続きをしなければならない。

     ◎期限その②「10カ月」‥相続税申告
     亡くなった方がそれなりの資産を持っていると相続税を納めなければならない。相続税は、故人の遺産が、基礎控除(3000万円+相続人数×600万円)を超える場合にかかる。その場合は、相続税法27条で「相続の開始があつたことを知つた日の翌日から10カ月以内」に相続税を申告をする必要がある。この10カ月も意外と短い。結構な量の資料を作成しないといけないので、申告は税理士に頼み、しかも、なるべく早めに相談に行くのが無難。また、税務署から請求書が来るわけではなく、自ら申告すべきことも要注意。

     ◎期限その③「3年」‥相続登記
     亡くなった方が不動産を所有している場合、その名義変更をしなければならない。不動産登記法76条の2によると、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」に相続登記(名義変更)するよう規定されている。令和6年に始まった「相続登記義務化」。これに違反すると、10万円以下の過料が来ることも知っておく必要がある。

     家族が亡くなった後、葬儀や法要、役所の手続き等で慌ただしく時が過ぎ、故人を悼む余裕がないとよく聞く。上記①はあまりゆっくりはしていられないが、3カ月以内に相続放棄をするかどうかの判断ができさえすれば、あと、財産的な手続き(銀行の預金を引き出すなど)は、仏式では四十九日を過ぎてから行うのが一般的。こうしたことを知っておいた上で、故人とのお別れや心の整理に時間を使ってほしい。(山下)

  • なぜ山林を引き取るのか

    なぜ山林を引き取るのか

     あかりテラスでは、山林など相続で引き継ぎたくない、いわゆる「負の不動産」を有料で引き取る事業を行っています。

     負の不動産を相続させたくない、または相続したくない、という相談はこれまでもかなりの数がありました。林業や農業の後継者は少ないですし、山やそこにある立木が価値があるという時代ではなくなっています。多くの方が、相続しても維持管理活用はできないし、そもそも、その地域に所有者及びその家族が住んでいないことがほとんどです。

     では、そのような相談者に対して、私たち司法書士は今までどのように答えてきたのでしょうか。「なかなか処分は難しいですね。近所の方や行政、森林組合、農業委員会等に相談してみられてはいかがでしょう?」。自分たちとは関係のない分野。他の「窓口」を紹介して、あとは、たいてい知らんぷりです。

     相談者の方も、そう言われて、各所回ってはみたものの、近所の方も、関係ありそうな、行政や機関も、引き取り手をつなげることはほとんどできません。たらい回しにあって、結局打つ手なし。そうなると、相続人は仕方なく「負の不動産」を相続せざるを得ず、これまで通り、固定資産税のみ支払いを続けるしかありません。同時に、所有していた土地に不法投棄がなされたり、自然災害を引き起こした場合の責任などのリスクも引き継いでいかなくてはいけませんでした。

     こうした現状をふまえて、国も「相続土地国庫帰属制度」という制度を作りましたが、国が引き受ける際の条件が厳しく、なかなか利用されづらいと言われています。国が制度をつくってくれたことには感謝しています。今後利用されやすくなることを期待しています。

     そこで、私たちのような民間事業者が立ち上がります。引き取り料を所有者側からいただくことにはなりますが、維持管理、利活用のできない方に代わり、私たちがその方法を模索します。引き取り料は決して利益になるわけではありません。将来の維持管理費に使われます。

     ただ、私たちも、引き取った土地を、ただ眠らせておくのはもったいないと思っています。知恵を絞り、「負の不動産」が「宝の山」に変わる利活用の仕組みを作れないかと考えています。特に、引き取った土地周辺の住民を巻き込んで、いま失われてしまった「人と人との絆」「地域のつながり」を再生できないか。もちろん、簡単ではありませんが、課題が難問であればあるほど、挑む価値があるというもの。そうした心意気が、ひいては「日本の山、水源、食料を守る」ことにもつながっていきます。こんな私たちの想いに共感していただける方は、ぜひ、一緒にやっていきましょう。協力してくれる事業者も大歓迎です。(宮村和)